[00:01.180] 『多くの信徒を集め、ミラシュカの国までその名前が伝わっている聖女、アナスタシア。 [00:10.140] 異例の拝謁が成立した表向きの理由は、献上品が過去に例のない神聖なものであったこと。 [00:18.380] けれど、その裏では摂政グラハドがこの日の実現に向けて暗躍していて――――。 [00:25.600] 聖女は跪いて頭を垂れ、幼い王に向けて古びた箱を差し出した』 [00:35.890] 「このような出所の不確かな物……カタリナ様、私が代わりに!」 [00:41.700] 「ううん、いいの。神様の聖遺物に失礼があってはいけない。そうだよね?グラハド」 [00:50.260] 『幼い王の問い掛けに、摂政は恭しく頷いてみせた。 [00:56.150] 誰にも見せぬよう、口元に不穏な笑みを浮かべながら――――』 [01:03.030] 謁見の問を 歴戦の騎士でさえ気圧される [01:26.190] 人知などでは 計れぬ重圧感が包んだ [01:49.090] 虚言ではない 触れずとも容易に伝わってくるような 圧倒的な光輝 [02:04.710] どのような身分の者の拝謁でも微笑を絶やしたことのない [02:16.460] 幼い王は瞳を好奇に輝かせ そっと引き寄せられるように [02:28.150] 疑いも持たず その手を伸ばした―――― [02:37.780] 「えっ?これは……?痛い!痛いよぉっ!」 [02:42.070] 「カタリナ様!?貴様、一体何をっ!」 [02:46.910] 「恵まれし者よ。絶望を知らぬ王よ。気分はどうかな?苦しい?」 [02:58.990] ah...両手で痛む頭を抑え 叫ぶカタリナ その声音は壮絶で [03:08.980] 雰囲気に飲まれて 呆然と事態を眺めていた騎士達もようやく動き出す [03:19.670] 「恥を知らぬ逆賊め。魔女の類か?捕らえろ!」 [03:23.780] 「私が魔女?あはっ、本当の魔女の怖さを知らないらしい」 [03:29.400] 首元に剣を向けられようと 一顔だにしない聖女は気怠く笑う [03:39.670] 「あんなものが神の聖骸であるわけがない。 [03:44.940] あれはそう、悪魔の遺骸だ」と [03:49.730] 猛る激情 その矛を屍に向けた騎士達を蔑んで [04:00.100] 激しい火をかけられて 黒炎あげ無言のまま聖骸は燃える [04:10.070] 「あんなものはもう用済みだ。 [04:14.910] この力さえあれば目的は遂げられるだろう」 [04:20.330] 容易く塵へと変わった "それ"はやっと望んでいた真実の [04:30.570] 眠りへとつけたのだろうか? [04:35.570] 聖女は神を見下し逆に十字を切った [04:41.290] 「その場の意識が聖骸へと向いている間に、 [04:44.210] 幼い王の叫び声が消えていた。 [04:47.040] まだ頭を抑えながらも、ふらふらとアーニィに寄りかかって……」 [04:50.720] 「――――大丈夫、もう平気。心配しないで」 [05:01.170] 強がる様子でもなく [05:06.090] 汗を拭いにこやかにah...立ち上がる少女 [05:11.190] 「その人から手を離しなさい。 [05:16.250] 私の病気を取り払ってくれたお方なのだから」 [05:21.590] 慈愛に溢れた笑顔は 理解できず困惑に立ち尽くした [05:31.580] アナスタシアさえ包み込む [05:36.730] 女神のような完成された光を帯びて―――― [05:48.040] 『聖骸とは、触れたものの望みに応じた力を授ける聖遺物。 [05:52.770] 誰が触れるか。どんな感情を持って触れるかで、 [05:56.650] その意味は大きく変わるものだった』 [05:59.340] 「アーニィが聞かせてくれた幾つものお話。 [06:02.650] そのお話の中のものでしかないはずの音楽がね、 [06:06.600] 頭の中に流れ込んできたの」 [06:09.600] 『聖骸に触れた後の頭痛はその音楽によるものではなく、 [06:13.940] 大量の情報が急激に [06:15.310] 入り込んできたことが原因で――――』 [06:17.860] 「お話の中の音も、歌も。どれも素敵だった。 [06:22.940] 頭だってもう痛くならないんだよ?」 [06:26.530] 「白い感情には白い奇跡を、か。 [06:30.490] いいえ、違う。これは力を得た人間の使い方と、感じ方の問題。 [06:37.940] 私はどこまでも穢れて――――」 [06:41.660] 『お礼をしたいからしばらく留まって欲しいという [06:44.760] 幼い王の願いを固辞して、聖女は [06:47.570] 静かにその場を後にする。 [06:49.580] 摂政グラハドだけが、そんな彼女に恨みがましい視線を向けて。 [06:55.030] それ以外の人々は互いの顔を見やりながら、 [06:58.460] カタリナが罪に問わないのであればと [07:01.380] 何も言わずに道をあけていた』 [07:03.590] 「――――平和すぎる国 こんなところで権力を握っても、 [07:10.670] どうせ使い物にならなかったでしょうね」