故避追はえて、出雲國の 肥の河上在る鳥髮の 地に降りましき、此の時しも 箸其の河より流れ下りき 十拳劔抜きて 斬り散らす大蛇、姿無くとも 厳つ霊の果てに隠れて 量りの狭間に【故れ告りたまへる】 逃げ込もうとも【まにまにして、如此設け】 八重の草那藝は【備へて待つ時に、】 斬り割く【其の八俣遠呂智(ヤマタノオロチ)】 目醒めた筐の中焦がしゅく【神代もとほく】 厳つ霊の糸の端【跡やふりぬる】 交わした約束と駆け巡る【出雲八重垣】 久方に舞い行く【伊豆毛夜幣賀岐】 すさのをのみこと 祈るともなく越えて 波の八重垣 思ひあれば へだつる雲も無し たづぬれば神代 大和言の葉辿る 音に八重垣 今宵ばかり 量りの狭間なり 信に言ひしが如来つ。 乃ち船每に己(おのもおのも) 頭を垂入て、其の酒を飲みき。 ここに飲み醉ひて留まり伏し 十拳劔抜きて 斬り砕く敵は、姿無くとも 映る厳つ霊を抜き去り 遍く剣は【故れ其の中の尾を】 此処に届かず【切りたまふ時に】 八重の草那藝は【御刀の刀毀かす】 斬り割く【都牟刈の太刀あり】 名残を、箱庭にて憐れむ【神代もとほく】 神の代を偲びて【昔語りを】 果たせぬ約束は今叶う【見るぞ畏き】 三柱舞い征く【伊豆毛夜幣賀岐】 すさのをのみこと 祈るともなく越えて 波の八重垣 思ひあれば へだつる雲も無し たづぬれば神代 大和言の葉辿る 音に八重垣 今宵ばかり 量りの狭間なり