バスを待つ彼女はなんだかちょっとくたびれてる お母さんのこととか保険のこととか色々ね 風に舞う 髪を撫でて 耳にかけると その輪郭にハッとする男 通りの向こう 僕たち顔を見なくなってもうどれくらい? 5年とか いや10年前 夜の防波堤 僕らはガキ 君は天使 ネイビーブルーのワンピース 湾の向こう工場がゆらゆら光ってた 彼女ってば 彼の何かを勘ぐって ねえ行こうよって走り出す 空には月が輝いていて テトラポットが波を砕く 話しかけるべきか躊躇してる間にバスは来た どうなるか彼はわかってた まあ別にいいのさ でもさあもし 窓越しに 彼を見つけたら きっと話したげな顔するはずだけど バスに乗った彼女はバッグを膝の上に抱き 歯医者さんの予約をしなきゃと外を眺めていた カーブを曲がり 街路樹の隙間で目があった その瞬間にハッとする男 通りの向こう 彼ったら もう間に合わないってわかってるのに息切らして走り出す 後悔になんて唾を吐け いつかの天使が笑ってる 僕は未だにあの夏の 夜のことをよく思い出す 空には月が輝いていて テトラポットが波を砕く またね またね