遠い昔の話をしようか 歴史の中に埋もれた それは決して 語られない 剣の話 燃えて落ちゆく 空の下 剣は抜かれて 縫い止めた 終わることなき 牢獄へと この身体と この手足を 時の鎖に縛られながら 胸を伸ばして 伸ばしても 指先さえも触れられない 白銀の器 哀れな男の話をしようか 歴史の闇に逃げ延びた それは決して 許されない 男の話 枯れて朽ちゆく 空の上 男は奪われ 落ち延びる ただひとときの 安らぎへと この魂と この心を 時の鎖に解き放たれて 腕を広げて 広げても 触れる先から崩れ落ちる 無色の器 腕を伸ばして ただ伸ばして 指先だけでも触れられたら 腕を広げて ただ広げて 掴んだその手は離さない 朱色の和傘 これから先の話をしようか いつか歴史になるだろう それでも今は真っ白な ぼくらの話