最後にあなたの
袖を摑む
さよなら 大好きでした
置いてゆこう
この戀を
驅ける遠雷に
見蕩れていた
あんまり綺麗だったから
はぐれたことにも気づかなくて
目隱ししていたのは
わたしのほうだつた
あなたの手の鳴るほうへ
行けどもそこにはいない
夏の庭に
あぜ道に
面影見るたびに
何度步み止ぬたでしよう
あなたの顏(かんばせ)は
見えない
帶をたたむ仕草を
好きだと言つてくれた
肘笠雨に追われて
走つた蓮華草の阪道
まるで花を手折るような
眩しい雨の中
霞む背中
花が辻
目隱しが外れる
夏の庭に
あぜ道に
面影見るたびに
何度步み止ぬたでしよう
摑んだ手をもう放さなきや
分かつているのに
夏空が広がる
生まれたてのような色
あんまク綺麗で
わたしは泣きました
やがて虹も
立つでしよう
袖を放したら。