ぼくらの自転車 原案,脚本,監督:楠木明 作曲,編曲:yukkedoluce 歌:楠木明,宮川杏 自転車で丘を越えて 隣の街までペダルを漕いだ 重い車体にふらつく僕の 後ろでいつも笑っていた   何処行くにも勝手についてきた 鬱陶しい君が嫌いだった でも本当は無邪気な君が好きだった   日が暮れて 帰り道に迷った 後ろから聞こえる泣き声 闇に溶け出したふたりを照らす光   夏の終わりに咲いた綺麗な花火 夜空が散蒔いた星屑 辺りはふたり以外誰もいない そこは僕らの特等席だ 帰ったら一緒に怒られよう   夜が少し肌寒くなって 真夏のときめきもほどける頃 あれから自転車の車体も 何故だか随分軽くなった   いつも後ろでくるくる笑った 日々冒険で忙しい僕についてきた 君がいつまでも側にいると思っていた   君が嫌いで鬱陶しくて 嫌いで照れくさくなって もうついてくるなよ なんて言って泣き出した君が ねぇ本当は... 本当は...   君のいく街すらも分からずに 夢中でペダルを漕ぎだしていた カラスも鳴くのを止め 日が暮れて 闇に溺れてしまう 丘も隣町も夜も越えて まだ鳴き続ける自転車 朝焼けが跳ね返る錆びた荷台 そこはからっぽの特等席だ   何処までも行けると信じてた あの頃の僕らの自転車 結局は辿り着けず 呆気なく壊れてしまった 知らぬ間に憶えていく世界で 僕らは大人になっていく あの夏の記憶も あの錆びた荷台も 君の特等席だ また会えたら 一緒にあの場所へ行こう