[00:04.100]ゆっくりとコーヒーが落ちる [00:06.700]氷を溶かしながら ゆっくりと ゆっくりと [00:14.200]「どうしたの?」と独り言みたいに呟く [00:17.750]その問いかけに「別に」と返事をする なんとなく目を反らす [00:24:300]コンビニの外は暑そうだ 熱を持った私の感情と 常に眠たそうな彼女の瞳 [00:31.900]ガラス扉一枚の温度差に 溜息が漏れる [00:44.500]高校生になってから書き始めた短編小説は [00:48.250]完成を間近にしてもタイトルを決められずにいた [00:54.800]欠落したピースは白々しく 私の中のゴールを [00:59.100]あやふやでふわふわした形のないものにしていた [01:04.800]誤魔化し 茶化し 日常はループする [01:08.600]私の真ん中にある小さな感情は名前すら付けられず [01:12.900]産み落とされず 眠り続けているのだろう [01:16.700]あるいは しっかりとした「意味」がまだそこにないのかもしれない [01:24.900]学校であったことをなんとなく話し 何度となく通った道を行く [01:29.900]なんでもないことをキャッチボールするうちに [01:32.500]何気ないテーマとして 彼女は物語の進展を問う [01:36.400]遠くを望むような深い瞳 吸い込まれると言うより 沈む [01:41.000]溺れるように見とれて私はすこしだけこわばった口を開ける [01:45.700]「わるくはないよ」とちょっと強がった [01:49.000]彼女は音楽 私は小説 それぞれの創作活動に張り合うべきものはない [01:55.700]そのはずなのに私は怠慢を咎められているような気持になる。 [02:00.600]パズルのピースが一つ見つからない そんな不安感 物足りなさ [02:05.700]「そっか」彼女は気怠く口笛を吹く アスファルトに反射する日差しと足音 [02:11.700]後何回聴けば 私は見つけられるのだろう [02:15.500]自分の中に眠るこの感情に気付くのは少し後 [02:20.100]でもその日は近いと確信めいたものを持って [02:23.400]今日も私達は二人で居る