ねえ、ママ————。明かりを消さないで 私が眠るまで傍にいて ねえ、ママ————。このまま手を握っていて 暗くなると、怖い狼がやって来るでしょ? でもね、ママ————。私、知ってるの ママは暗い部屋であの狼とワルツを踊っている 窓の外は激しい雨 鼓動は早鐘のように 私は声を殺して、ただ、じっとして その舌先、蠢く指 雨は激しさを増して 何かが私の中で目覚めそうな気がして眠れぬ夜 ねえ、ママ————。いつかあの狼が 私をさらいに来るかも知れない でもママは“ありえない”と微笑うだけ だけど私、ひとりの夜が怖いの あのね、ママ————。私、知ってるの ママは暗い部屋であの狼が来るのを待ちわびている 窓の外は激しい雨 鼓動は早鐘のように 朝ではない何かを待つ ひとりの夜 暗闇からあの指先 私をワルツへと誘う ママには秘密の夜 初めての衝動 青い夜の出来事