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拝啓 おやじおふくろ、元気にしてるか? |
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普段めったに電話せんし、実家にもなかなか帰られへんからさ |
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たまにはこうやって手紙でもと思ってな。 |
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最近ずいぶん寒くなってきたけど もう大概えぇ歳なんやから |
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くれぐれも無理はせんとってくれよ。 |
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いや! 別にな大した用事がある訳じゃないのよ |
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ただ、元気にやっとんのかなぁ～って…いやだってな |
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こうやって目ぇつむってるとさ、2人の心配そーな顔ばっかり |
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浮かんでくんのよ やから今俺が伝えるべき事はさ |
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「今までありがとうな」とか、そんな言葉やなくてな |
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期待どおりに育たなくてゴメンな |
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自慢の息子じゃ 決してないんだけど |
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でも俺な ホンマにな 幸せに生きてるからさ |
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人並みに悩みもあるけれど 笑って暮らしてますから |
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なぁなぁ、なぁなぁ、おかん、俺 今だに覚えてる事が1つだけあるんや |
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あれは確か中学くらいん時やったかな 何もかもが嫌になって |
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学校も塾もピアノさえも全部投げ出してしまった時 そんな時あったやろ? |
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もう、そっちは忘れてしまったかもしれんけど あん時俺にくれた言葉 |
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1つだけだったんよ たったの1つだけだったんよ |
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「まぁ そういう時もあるわな」って、それ以上何も言わんかったんよ |
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逃げたってえぇけん、負けたってえぇけん、それでもホンマの |
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瞬間にだけは輝きなさいって、そう背中を押されたみたいでな |
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我が道をつらぬいて本当ゴメンな |
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一流の会社に入れずゴメンな |
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でも俺な今んとこな後悔は感じてないからさ |
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死ぬまで迷惑掛けるけど もう少し我慢してくれよ |
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期待通りに育たなくてゴメンな |
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自慢の息子じゃ決してないんだけど |
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でも俺なホンマにな幸せに生きてるからさ |
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人並みに絶望するけれど 笑って暮らしてマスから |
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「もう、心配せんで大丈夫やで」とかな、当分言えそうもないんやけどさ |
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でもな、俺は俺で良かったなって ホンマに心から思ってるからさ… |
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そこだけは、安心して、これからも見守っとってな。 |